老老介護とは?高齢者同士の介護を支えるための予防策と改善策
近年、高齢化の進行に伴い「老老介護」という言葉が注目されています。これは、介護をする側とされる側の両方が高齢者である状況のことです。体力や精神的な負担が大きく、共倒れのリスクも高まるため、深刻な社会課題となっています。本記事では、老老介護の現状をふまえ、予防策や少しでも負担を軽減するための改善策について紹介します。
進む高齢化とともに増える老老介護とは
高齢化が進む日本社会で、深刻な課題のひとつとされているのが「老老介護」です。以下では、老老介護の意味や背景、その原因について紹介します。
高齢者同士で支え合う「老老介護」
老老介護とは、介護をする側とされる側の両方が65歳以上の高齢者である状況を指します。夫婦間だけでなく、高齢の親とその子ども、高齢の兄弟姉妹など、家族構成はさまざまです。
現在、在宅介護を行っている世帯の約半数が老老介護の状態にあり、さらに「超老老介護」と呼ばれる、介護者が75歳以上のケースも約3割を占めています。今後も高齢化の進行により、この割合はさらに増えると予測されており、社会全体での対策が求められています。
長生きの時代が抱える介護のギャップ
老老介護が増加している背景には「平均寿命」と「健康寿命」の差があります。現在、日本人の平均寿命は男性で約81歳、女性で約87歳です。一方で、介護を受けずに自立して生活できる期間である健康寿命は、男性が約72歳、女性が約74歳とされています。
このギャップの分だけ、介護が必要な期間が生まれるのです。医療の発達で長生きできる時代になりましたが、それと引き換えに、長期間の介護が必要になる現実とどう向き合うかが問われています。
負担が増える背景には「お金の問題」も
老老介護が進む理由のひとつには、経済的な問題もあります。介護施設への入居や訪問介護サービスの利用には、継続的な費用がかかるため、経済的な余裕がない世帯では在宅介護を選ばざるを得ないケースが多くあります。
年金や貯蓄だけでは十分な介護体制を整えるのが難しく、高齢者同士で無理をして介護を続けている家庭も少なくありません。金銭的な理由が、介護の負担を一層重くしているのが現実です。
老老介護に潜む5つのリスク
老老介護は、介護する側もされる側も高齢者であることから、多くのリスクを抱えています。以下では、老老介護に潜む代表的なリスクについて解説します。
自分の時間がなくなることによる生活の圧迫
介護が必要な時間は日常生活の多くを占めるため、介護を担う高齢者自身の自由な時間が大きく減ってしまいます。趣味や友人との交流、自分の体調管理などにかける時間が取りづらくなり、生活の質が著しく低下することもあります。
心も体も限界に近づいていく
老老介護では、体力的にも精神的にも大きな負担がかかります。高齢者自身が病気や関節の不調を抱えている場合も多く、介護動作ひとつひとつが身体にこたえるものになります。無理を重ねた結果、うつ病や身体の不調を抱えるケースも少なくありません。
外とのつながりが失われやすい
介護が長期に及ぶと、外出する機会が減り、介護者が家の中に閉じこもりがちになります。外出のたびに被介護者の世話を誰かに頼まなければならないことから、だんだん人とのつながりが希薄になり、社会的な孤立を深めてしまうのです。
「共倒れ」が起こることも
老老介護の最大のリスクは、介護者も体調を崩して倒れてしまう「共倒れ」です。介護者が病気やけがで倒れると、被介護者の命にもかかわる重大な問題になります。
とくに、介護者が一人で介護を抱え込んでいる家庭では外部からの支援が届かず、発見が遅れることもあります。
認知症同士の介護がもたらす深刻な事態
介護者と被介護者の両方が認知症を抱えている状態になると、介護が適切に行われず、誤った対応や放置、場合によっては事件に発展することもあります。
実際に、介護疲れから殺害に至ったという痛ましいニュースも存在します。そのため、早期の相談や介入が何より大切です。
老老介護の負担を減らすにはどうしたらいいのか
老老介護は、介護の専門家や支援制度を上手に活用することで、少しずつ負担を軽減できます。ここでは、老老介護に悩む方に向けて、相談窓口の活用方法や老人ホームの選び方など、実際に役立つ解決策を紹介します。
まずは信頼できる相談先を見つけよう
老老介護に行き詰まりを感じたら、地域の介護相談窓口に相談することをおすすめします。とくに頼りになるのが「ケアマネージャー」の存在です。
ケアマネージャーは、介護を受ける方の状態や家族の希望をもとに、適切なサービスを提案し、ケアプランを作成してくれます。また、介護サービス事業者との調整や申請手続きのサポートもしてくれるので、初めて介護に直面した方でも安心です。
無理をしないために施設の利用も検討を
自宅での介護が難しくなったと感じたら、老人ホームへの入居もひとつの選択肢です。費用はかかりますが、介護の負担を大きく減らせる点は大きな魅力です。
たとえば、24時間体制で介護サービスが受けられる「介護付き有料老人ホーム」や、認知症の方専門の「グループホーム」など、状態に応じた施設が多数あります。どの施設が合っているかは要介護度や家庭の状況によって異なりますので、ケアマネージャーに相談してみてください。限界を迎える前に、早めの検討をおすすめします。
まとめ
高齢化の進展に伴い、老老介護はますます身近な課題となっています。介護者も被介護者も高齢であるため、心身の負担が大きく、時間や精神的疲労、孤立、さらには共倒れのリスクも潜んでいます。しかし、これらの問題は適切な支援や相談窓口の活用、老人ホームなどの施設利用を検討することで軽減が可能です。一人で抱え込まず、早めに専門家や地域の支援を頼りましょう。今後も増加が予想される老老介護に対し、社会全体で支え合う仕組み作りが求められています。